2017年3月20日 更新

スピード時代に寄り添うスロー空間。創業350年の金魚問屋がはじめたカフェ「金魚坂」

創業350年を誇る老舗金魚卸問屋ではじまった「金魚坂」という名のカフェ。かつては金魚の水槽があった土地を、別荘のようなカフェへと生まれ変わらせました。そこに込められた7代目代表・吉田智子さんの思いは、現代の生活に寄り添ったものでした。

金魚の問屋がはじめたカフェ。

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電車に乗り、降り立ったのは都営地下鉄・本郷三丁目駅。
駅前は大通りに面しており、車が盛んに行き来しています。この大通り沿いを歩くこと数分、次第に住宅街へつながる細い道が目につくようになってきました。そのなかでもひときわ細く、しかもやや急な坂道になっている路地を発見。どうやらこれが「金魚坂」、ではなく「金魚坂へとつづく道」のようです。

ここまでくると、大通りの喧騒がまるでうそだったかのよう。あたり一帯は閑静な住宅街で、落ち着きを感じさせます。こんな場所にあるカフェなら、きっとゆったりとした時間を過ごせるはず、とおのずと期待感も高まります。
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坂道をのぼりきったところで、ついに「金魚坂」に到着。金魚をモチーフにした看板が掲げられているとても可愛らしい入り口です。
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建物は避暑地の別荘を思わせるすっきりとしたお洒落な造り。カフェのすぐお隣が、金魚たちが暮らす水槽となっています。
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目が飛び出したファニーフェイスの金魚に、近寄るとこちらにお尻を向けてしまうシャイな金魚、反対にこちらの顔をじっと見つめてくる人懐っこい金魚など、個性豊かで可愛らしい金魚たちが出迎えてくれました。
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ゆらゆらと金魚たちが泳ぐ様子は幻想的で、とても癒されます。また、種類 によって少しずつ性格が異なるため、それぞれを観察しているとつい時間を忘れてしまいそう。
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顔を水面から出して「遊ぼうよ~」というかのように口をパクパクさせている子を見つけた時は、おかしくて思わずクスリと笑ってしまいました。

シックで上質な空間は、もともとは金魚の水槽

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カフェ内に足を踏み入れると、吹き抜けになった開放的な空間が広がっています。シックでなおかつ品の良さを感じさせるため、まさに“大人の隠れ家”という形容がぴったり。その反面、マスコットなどの金魚グッズがあちこちに置かれているためか、居心地の良さと親しみやすさも感じさせます。

また、驚いたことに現在のカフェスペースは、もともとはなんと金魚たちが飼育されている「水槽」だったのです。周囲を見渡すと壁には確かに水槽の「淵」だったと思われるラインが。2階からカフェを見下ろすと、まるで水槽をのぞいているかのような、不思議な気分になります。
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カウンタースペースもあり、渋いマスターが目の前でコーヒーを淹れてくれます。
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また、目の前にはおしゃれで高級感漂う食器がずらりと並びます。よく見ると、カップの取っ手部分に金魚が飾り付けられていたり、お皿に金魚がプリントされているのを発見。こんな意外な楽しみがあるのも、「金魚坂」ならでは。

伝統も歴史もある“金魚”。もっと多くの人に知ってもらいたい

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カフェ&レストラン「金魚坂」の母体となる「株式会社 吉田晴亮商店」の7代目代表取締役・吉田智子さん。

現代は物事が目まぐるしく進歩し、いつもスマートフォンが手放せない、いわば“スピード時代”。「早い時代の流れに疲れを感じてしまった人に、ゆったりとした時間が流れる「金魚坂」で過ごしてしていただきたい、という気持ちがありました。」とにこにこしながら、ゆったりとお話しをする吉田社長。
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「うちには、可愛い金魚がこんなにたくさんいるんだもの。もっと大勢の方に金魚の魅力を知ってもらいたい」

この「金魚坂」ができたのは、今から17年前の2000年のこと。同時に、一般客を対象にした「金魚の小売り」や「金魚の釣り堀」のサービスも開始しました。こうして吉田社長の様々なアイデアの元、気づけば「金魚坂」は小さな子どもから大人まで、幅広い年代の人たちがゆったりと楽しめる空間となりました。
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「株式会社 吉田晴亮商店」は江戸時代から350年以上続く、老舗の商店です。つまり、「金魚」そのものにも、相当の伝統と歴史があるということ。「江戸時代から、金魚は人々にとって身近な存在であり、金魚を愛でることは、日本における伝統文化とも言えます。この伝統文化に少しでも触れてもらいたいという思いから、『金魚坂』を作りました。」

金魚を自宅で飼うことは、意外なほどハードルが低い

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気になるのが、金魚の正しい飼い方。金魚は生き物なため、こまめな世話が必要なのかと思いきや、吉田社長からは意外なアドバイスがありました。

「金魚は順応性の高い生き物なので、屋外に水槽を置いても大丈夫。それに清潔すぎる環境が苦手な生き物だから、マメに掃除をしないほうがかえっていいんですよ。わざわざ水槽や金魚鉢を用意する必要はないから、バケツやどんぶりなど身近にある容れ物に入れて、気軽に飼ってみて。」

そんな言葉に触発され、私も金魚を自宅で飼ってみようかな、と真剣に考えてしまいました。

吉田社長も、長年ご自宅で金魚を飼われています。「家事の合間などに、ちょっと手を休めて金魚鉢をのぞくことがあるの。そうすると、ふーっと水面のあたりにまで浮かんできてかわいい表情を見せてくれるので、とても和まされるんです。」また、金魚にも犬や猫のように機嫌や体調の良し悪しがあり、動作を見ているとだんだんとそれがわかるようになります。日々話しかけながら丁寧に世話をしてあげると、その愛情に応えるように元気になり、人間にも懐いてくれるのです。

金魚を見るたびに癒され、生活にうるおいがもたらされる

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「金魚坂」には、つい時間が経つのを忘れてしまうほどのゆったりとした時間の流れを感じられる空間がありました。そのせいか取材ということも忘れ、いつもより長くお邪魔してしまいました。

忙しい日々が続いて、気持ちに余裕がなくなってしまった時や、一人の時間を満喫したい時に訪れて、一息つきたい。誰もがそんな気持ちになったとき、行ってほしい場所です。

また、金魚と触れ合うひとときも、この場所に訪れる醍醐味の一つ。金魚の愛らしい表情や仕草を見るたびに、思わずきゅんとしてしまいます。

金魚は、古くは江戸時代から人々に親しまれてきた生き物ですが、金魚を愛でるDNAは、現代の私たちの中にもしっかりと組み込まれているのでしょう。きっと江戸時代の人々も、金魚を目にするたびに癒され、日々の憂いごとをつかの間忘れることができたのでは、と思います。

(写真と文=ogata)

【金魚坂】

住所:東京都文京区本郷5-3-15
TEL:03-3815-7088
営業時間:
平日11:30-21:30 (L.O/21:00)
土日祝11:30-20:00 (L.O/19:30)
定休日:月曜・第3火曜休 (祝日の場合は営業/翌日振替休日)

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