2017年3月21日 更新

エスプレッソではじめる気持ちの切り替え。 「Allpress Espresso」に聞いた海外のエスプレッソ文化

エスプレッソは苦くて濃いと敬遠していた私。フランスのとあるレストランで食後に飲んだ一杯のエスプレッソの美味しさが、その魅力に目を向けるきっかけをくれました。近年のカフェブームのなか、日本では実際にどのくらいエスプレッソが親しまれているのか疑問に思い、エスプレッソのスペシャリスト「Allpress Espresso(オールプレスエスプレッソ)東京ロースタリー&カフェ」に伺いました。

海外で知ったエスプレッソコーヒーの美味しさ

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エスプレッソは苦くて濃い、という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。私もその一人。コーヒーは好きだけれど、エスプレッソは未開拓のままでした。そんな私が、とある海外旅行中の勘違いからエスプレッソデビューを果たすことに。それはフランス・パリのビストロで食後のコーヒーを注文したときのことです。しばらくして店員さんが笑顔で持ってきたのは小さなエスプレッソカップ。「私、コーヒーを注文しましたよね?」と聞くと「ええ、だからコーヒーを持ってきたわよ」と逆に首を傾げられてしまいました。
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フランスでは「コーヒー」と注文するといわゆる「ブレンド」ではなく「エスプレッソ」が出てくることが多いそうです。小さなデミタスカップに口をつけ、一口飲んでみると…やっぱり苦い!でも不思議と口の中がさっぱりし、甘い食後のデザートの余韻をきりりと引き締めてくれました。私の中で「意外と美味しい!」とエスプレッソの印象が好転した瞬間でした。

海外のレストランでは、食後のデザートを楽しんだ後に大きな手で小さなエスプレッソカップを持つ欧米人をあちこちで目にします。でも日本のカフェではエスプレッソを注文する人は滅多に見かけません。近年のカフェブームの中、実際にはどのくらい需要があるのか、ニュージ―ランド発のエスプレッソのスペシャリスト「Allpress Espresso(オールプレスエスプレッソ)東京ロースタリー&カフェ」に聞いてみました。

木材倉庫をリノベーションしたモダンなロースタリー&カフェ

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元は物流の拠点としての倉庫街でもあった清澄白河。歴史を感じる倉庫や建物に溶け込むようにぽつりぽつりとおしゃれなカフェや美術館、アートギャラリーが点在しています。様々な文化が交差する街に今回訪れたロースタリー&カフェ・オールプレスエスプレッソはありました。

清澄白河駅を出て昔ながらの米屋さんや花屋さん、サードウェーブコーヒーの代表格ともいえるブルーボトルコーヒーを通り過ぎ、歩くこと約15分。途中で観光客らしい外国人と何度もすれ違いながら進んでいくと、閑静な住宅街の真ん中にこげ茶色の木で外壁を覆われた大きな建物が現れました。
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ロースタリー兼カフェとして2014年に開業したオールプレスエスプレッソ。背の高い焙煎機を設置するのにうってつけ、ということで天井の高い元木材倉庫をリノベーションしました。入り口側がカフェスペース、奥が焙煎スペースになっており、店内に入るとカウンターの奥に大きな焙煎機や麻袋に入ったコーヒー豆が見えます。

東京進出から3年。地域の憩いの場として親しまれる

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陽光が差し込む明るい店内は平日の午前中にもかかわらず、客席の半分以上が埋まっており、コーヒー片手に和やかに談笑するお客さんの声が聞こえてきます。

平日に来るお客さんのほとんどが近所に住んでいる方なんだそう。海外からの「コーヒーツアー」でこの界隈を訪れる外国人も多いほどカフェ激戦区の清澄白河ですが、近隣のカフェのスタッフさんもライバル視するでもなく、気軽に行き来する和気あいあいとした関係だと聞き、のんびりとした下町ならではの温かさを感じました。
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日本初出店となるこの地にオープンして間もなく3年。こだわりのエスプレッソ系ドリンクを提供するカフェとして地域に馴染んでいる様子が伺えます。

1986年、エスプレッソをこよなく愛するマイケル・オールプレス氏によってスタートしたオールプレスエスプレッソ。
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ニュージ―ランドのオークランドで出店した最初のロースタリーから、シドニーメルボルン、ロンドン、そして東京まで店舗を拡大し、今ではコーヒー愛好家達に知られる有名店の一つへと成長を遂げました。こちらの東京店でもオーストラリアからの旅行者が「東京にもオールプレスがあるんだね」とわざわざ足を運んでくれることもあると言います。

酸味、苦味、甘味、炒りの深さ、軽め、重め。複雑な味わいの飲み物であるコーヒーをシンプルに提供するのがオールプレスエスプレッソのモットーです。焙煎方法は、熱風を利用してローストするというユニークなもの。その特殊な焙煎方法で淹れるエスプレッソは雑味がなく、甘い味のするコーヒーに仕上がると聞き、早く味わってみたい、と私の好奇心をくすぐります。

スタッフさんが語るエスプレッソの需要と魅力

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では実際にエスプレッソを注文しているお客さんはいるのでしょうか?「正直に言うと、日本ではエスプレッソのオーダーはほとんど入りません」と話す広報の萌子さん。彼女は以前、オーストラリアのカフェで働いていましたが、やはり日本と海外とのコーヒー文化のギャップを感じたそうです。

「私が住んでいたオーストラリアでは、チェーン店のカフェは少なく、個人経営のカフェのほとんどが朝7時オープン。お客さんの多くが仕事前に立ち寄ってエスプレッソなどの『目覚めの一杯』を飲んでから職場に向かう姿が日常でした」

日本では10時や11時にオープンするカフェもあり、「朝一番にカフェでコーヒーを飲む」というよりもランチの後のティータイムにコーヒーを楽しむ文化ですよね、とその違いを話します。
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卸先のクオリティコントロールに務めるトレーナーの純弥さんがエスプレッソを飲むのもたいてい朝一番。仕事前に飲むエスプレッソで気持ちが引き締まり、気合いが入ると言います。イタリア発祥のエスプレッソは短時間で一気に抽出するのが特徴の濃度の高いコーヒー。フィルターを使って抽出する一般的なコーヒーと比べて、マシンによって圧力をかけ一気に抽出することで、豆のエグみや雑味のないコーヒー本来のうまみを味わえるそうです。
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純弥さんはその日の気候や湿度によって変わるデリケートなコーヒー豆の味を確認するためにも、エスプレッソを毎日飲むと言います。「エスプレッソは他のドリンクと比べて酸味が出やすいので、すぐ飲むことをお勧めしますよ」とアドバイスもいただきました。

エスプレッソ初心者には「ロングブラック」がおすすめ

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エスプレッソデビューをするなら萌子さんのオススメは「ロングブラック」。エスプレッソと別添えでお湯がついてくるので、自分好みの濃さに調整して味わえます。エスプレッソは濃度が高くとろりとしているので、少し薄めるだけでとても飲みやすくなります。このようなメニューがあることを知らなかったので驚きでした。興味はあるけど手が出せなかった、そんなエスプレッソ初心者さんにぴったりのドリンクです。
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お馴染みの「カプチーノ」や「カフェラテ」以外にも「フラットホワイト」というエスプレッソ系ドリンクがありました。フラットホワイトは、カプチーノと同じ量の1ショットのエスプレッソにフォームミルクを注いだもの。違う点は「ミルクのストレッチ感(簡単に言うと、ミルクのふわふわ感)」。カプチーノはフォームが厚めでふわふわの口当たり、フラットホワイトはフォームが薄めでカプチーノに比べるとカフェラテに近いように感じました。

「飲みたい」と思ったときがエスプレッソデビューのタイミング

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「うちの豆はエスプレッソでも甘味があって美味しいですよ」、と日本でもエスプレッソが定着することを期待する萌子さんですが「実は私もエスプレッソよりカプチーノ派なんです」と本音をもらします。「コーヒーはその日の気分や体調によって感じ方が変わるので、飲みたいものを飲みたい時に楽しめばいいんです」。その一言が「海外で愛される大人の飲み物」と勝手にエスプレッソを位置づけていた私の固定概念をするりとほどいてくれました。確かに日本ではまだ需要は少ないけれど、どんな時に楽しめばよいかをアドバイスしてもらったことで私とエスプレッソとの距離がぐっと近くなった気がします。

試してみなければわからない、その美味しさ。朝一番の目覚めの一杯として、大事な商談の前にしゃきっと気合を入れたいとき、食後の締めに、デザートの後に…様々な楽しみ方があるエスプレッソコーヒーの世界は思ったよりも自由で、深いものでした。


(文・佐藤有香)

【Allpress Espresso 東京ロースタリー&カフェ】

住所/東京都江東区平野3-7-2
TEL/03-5875-9392
営業時間/月~金曜日8:00~17:00
土・日・祝祭日9:00~18:00

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