2017年2月8日 更新

浅草の老舗「神谷バー」でゆるりと嗜む 心地よいひとり飲みと下町の社交

日本初のバーとして知られる「神谷バー」。130年以上にわたって浅草の町とともに歩んできた「庶民の社交場」では、レトロな佇まいとお店自慢のオリジナルカクテル「デンキブラン」が迎えてくれます。下町の趣を感じながら一歩足を踏み入れると、そこは世代を超えて笑い合う人々の声に溢れていました。

レトロな佇まいにオリジナルカクテル…趣漂う「庶民の社交場」

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仕事帰りの一杯や、恋人との特別なワンシーン、友人と他愛もない話に花を咲かせる女子会…どんな飲み会も楽しいけれど、30代を迎えたら「ひとり飲み」もワンランクアップさせたいと思いませんか? かく言う私もその一人です。

「ひとり飲みの代名詞、バーならそのヒントが隠されているはず!」と向かった先は、日本初のバーとして知られる「神谷バー」。130年以上にわたって浅草の町とともに歩んできた「庶民の社交場」では、レトロな佇まいとお店自慢のオリジナルカクテル「デンキブラン」が迎えてくれます。下町の趣を感じながら一歩足を踏み入れると、そこは世代を超えて笑い合う人々の声にあふれていました。

浅草の町を象徴する、懐かしき日本で最初のバー

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浅草駅を降りてすぐ、雷門へと続く大通りに「神谷バー」はあります。
通りには人力車が走り、先にはアサヒビールの金色のオブジェを望む一等地。文化財にも指定されている明治13年創業の建物は、下町の情緒を感じさせるロケーションと相まってノスタルジーな雰囲気を醸し出しています。
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この日は平日。「せっかくなら昼から飲んでみよう!」と思い、11時半の開店に合わせて訪ねてみると、すでにそこには人の列が…みなさん観光客かと思いきや、近隣の方も多く「いつも開店前から並んでいるよ」とのこと。私も並んで開店を待ちます。
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外から見えるアーチ型の三連窓や、落ち着いた色味で統一されたクラシカルな看板など、隅々まで凝ってデザインされているので見ていて飽きません。
浅草の町になじむ神谷バーの歴史に想いを馳せていると、いよいよオープンを迎えます。

一人で行っても「独り」にならない。デンキブランが結ぶご縁

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広々とした店内は、全部で146席。お客様が多くても、ちゃんと座ることができました。
ここでは最初に食券を購入するシステムなので、メニューを選びながらレジへ。次第に気分も高まってゆきます。
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お店の看板メニューは、オリジナルカクテルの「デンキブラン」。創業した明治期は電気が珍しい時代だったため、目新しいものには「電気」をつけて呼んでいたことや、飲んだ時の電流が走るような感覚から、その名が付いたのだそう。ブランデーをベースにワインやジン、薬草などをミックスして作られていますが、レシピは未だに秘伝となっています。

メニューを見てみると、デンキブランは270円、その横にある「電氣ブラン(オールド)」は370円。聞けば、デンキブランがアルコール度数30度なのに対し、オールドは40度なのだとか。神谷バー初心者の私は、通常のデンキブランをいただくことにしました。
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店の奥に設置されたオシャレなバーカウンターには、デンキブラン専用のグラスが並び、次から次へとお客様のもとに渡ってゆきます。店員さんが片手で食券を切り取る様子もとてもスマート。ついに、私のところにも金色に輝くデンキブランがやってきました。
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キリリと冷えたデンキブランを口に運んでみると、まず最初に度数が高いお酒ならではのビリビリとした衝撃。その後はブランデーの風味が口いっぱいに広がり、ワインや薬草の優しい香りが漂います。刺激もありながら、芳醇でまろやか。初めての味に驚いていると、隣に座っていた男性が話しかけてきてくれました。
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その方は、仕事が休みの日には神谷バーに来ている、20年以上の常連さんなのだそう。デンキブランとビールを交互にいただくスタイルで飲み進めていきます。なんでも、ツウはこうしてビールをチェイサーにするのだとか。「なぜ一緒に飲むんですか?」と尋ねると、「ビールだけでは物足りない。デンキブランの独特な味わいに魅了されてしまった」のだと教えてくれました。

その後も、耐震工事によって店内の柱が太くなったこと、この近くでランチをする時のお店選びのコツなど、神谷バーと浅草の町についてたくさんお話してくださいました。デンキブランの抜群のオリジナリティも話を盛り上げてくれます。このお店でしか出会うことのない人と過ごす心地よいひと時に、すっかり心はほぐれてゆきました。

デンキブランは、「飲みやすい洋酒」から看板メニューに

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「庶民の社交場」というフレーズがぴったりな神谷バー。存分にその趣を楽しんだところで、日本初のバーとしての歴史について、オーナーの神谷さんに詳しくお話を伺いました。
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初代オーナーは、明治13年に酒の一杯売りとして、神谷バーの前身である「みかはや銘酒店」をオープン。その頃高価だった洋酒を、「手軽で飲みやすくしたい」という思いからデンキブランが誕生しました。すると、デンキブランは下町を行き交う人々はもちろん、歴史に名を残す文豪たちからも愛される逸品に。太宰治も常連客の一人で、自身の代表作「人間失格」にデンキブランを登場させたほどです。
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こうしてお店は、「浅草に来たら神谷バー」と言われるまでに成長しました。庶民の味からこだわりの洋食まで幅広く揃える一方、客席は昔と変わらず相席でご案内。「これ食べてみな」というお客様同士のやりとりが今も変わらず飛び交っています。ちなみに人気メニューは、煮込と串かつ、かにコロッケです。

楽しみ方は多彩! 和洋問わずデンキブランとご一緒に

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さまざまな食事とお酒が堪能できる神谷バーですが、実はその楽しみは1Fのバーだけのものではありません。2Fは洋風料理を供する「レストランカミヤ」、3Fは「割烹神谷」として営業しています。
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メニューはそれぞれ異なりますが、3フロア共通しているのは、デンキブランを主軸にしていること。和洋どの料理ともマッチするデンキブランの魅力が堪能できます。いずれも開店時間は同じなので、その日の気分に合わせて訪ねるフロアを変えてみるのも楽しいかもしれませんね。
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また、お店の外には売店もあるので、デンキブランを買って帰ることもできます。バーでデンキブランを堪能したら、お土産にしたり、お家でもう一度味わってみたりするのも一興です。

大人こそ訪ねたい、心安らぐ粋なバー

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神谷バーに流れる時間は、ゆったりとしていて朗らか。深い懐に包まれているような安心感がありました。インタビュー中に伺った「女性のお客様も多いですよ。浅草観光に来た海外の方もいらっしゃいます」という言葉の通り、年齢や性別、国籍まで問わず一緒に楽しめる雰囲気は、長い歴史の中で培われたものなのでしょう。

ひとり飲みと言うと、一人で黙々とお酒を味わうイメージでしたが、気負うことなくゆるりとその場を楽しむことが秘訣なのかもしれません。下町で出会った粋な一杯が、「肩の力を抜いてみたら?」と言っているようでした。

(文/竹川春菜)

神谷バー

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住所/台東区浅草1-1-1 1F
営業時間/11:30〜22:00(ラストオーダー21:30)
定休日/火曜

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